彼女は予想の斜め上を行く

「野球もないし、行こうかな」

ポツリと漏らした一言にあったら来ないのかよと心中でツッコミながら、目の前の人物は野球中継の為だけに彼氏以外の男の車に乗った女だと思い出す。

彼女の世界は、野球を中心に回っているのだとつくづく実感する。

それでも、野球の次でいい。

今晩、俺と一緒にいるという選択肢が心底嬉しかった。





「お待たせ」

新鮮な魚が美味しいと評判の和風居酒屋の前。

現地集合しようと言い出した女の声が携帯を弄っていた俺の耳に届いた。

「金本さ………」

携帯から声の聞こえた方向に視線を移すと、惚れた女の名前を呼ぼうとした声が詰まった。

「長野君?」

初対面の時のように、言葉が詰まったのは。

「ちょっと……長野君?」

瞳が釘付けになったのは。

「どうしたの?長野君」

走り寄ってきた君が可愛い過ぎるから。