その瞬間、男が息を飲むのがわかった



ハイドの前に立った者のほとんどがそうだ




そのあまりの美しさに息をすることさえ忘れてしまうのだ




「お前……




女だったのかっ!?」





「………殺されたいの?」


首元の剣がさらに近づく




「うわっ!!


待てっ!

悪かった!悪かったから!!



あんまり綺麗な顔してたからつい…」




男が両手を上げ、言う




……ハイドにとって“女”は禁句のようだ




「…………もう一度聞く。
お前は何者だ
何をしにきた。」




男の先程までの軽い雰囲気が消えた



「………俺の街…、



襲われたんだ。


それで生き残ったのは、たまたま街の外に出てた俺と、俺の幼なじみだけ



街の形は保ってたけど…、残ってたのは地面に倒れてる街の人たちだけだった…


もう、大切なひとが傷ついた姿は見たくない



だから、あいつは……


あいつだけは、死なせる訳にはいかないんだ!




だから……」




「だから…

俺から何か奪おうとした、か。」




「あぁ。


腕っ節には自信があったからな…。



まぁ、これだけ近づいてやっとお前の強さに気づくなんて、まだまだだな」



そう言って、自嘲の笑みをもらした

軽い雰囲気も戻っていた


ハイドが剣を下ろす



「殺さないのか?」



「戦う意志のないやつを殺す趣味はないね。


それにまだ、死ねないんだろう?」



ハイドが悪戯っ子のような微笑みを見せる



その姿に男は顔を赤くした


「お前、やっぱ女だろ…」



「やっぱり殺されたいようだな。」


ハイドが再び剣を抜く



「じょ、冗談だって!」


「はぁ……。


お前、疲れる。」



剣を下ろし、呟く


その様子にほっとしたような表情を見せ、男は尋ねた



「そういえば、お前は誰?
名前は?


こんなとこで何してんの?」



ハイドの顔が一瞬、誰にもわからない程度に歪む



もちろん、男もその変化には気づかなかった