「相合傘する?」
・・・はぁ?
この人は何を言っているんだ。
もしかしたら、いや、もしかしなくても
「変態ですか?」
「・・・あぁあ!!??」
え・・・!!??
声に出てた!!??
「す、すいません。つい本心を・・・」
「うわぁ、傷つくわぁ!同じクラスメイトの
王子様が傘をもっていない幼気な姫君に
傘をともにしようと言っているのに・・・!」
「え?同じクラス ?」
「え?南野さんでしょ?」
びっくりした。
私の事を知っている人なんてあまりいない。
なんせ影が薄いから。
いつもしたばかり向いているせいで
クラスの顔と名前なんて
覚えているわけがない。
「南野さん、とりあえず入りなよ。濡れるよ?」
「・・・すいません。」
「なんで謝るのさ、一応親切なんですけど。」
「え?だからちゃんと謝ってる・・・。」
「違う違う。親切にしてもらったら「ありがとう」だろうが。」
・・・ここ数年ありがとうなんて口にしただろうか。
「あ、ありがとう?」
「なんで疑問形!!??
「なんとなく・・・」
「俺の名前知ってる?浅井っていうんだけど。」
「・・・ごめん、知らない。」
「ははっひっでー(笑)」
「すいません。あ、私家こっちなので・・・。」
「俺もだけど?」
「え・・・?」
「お隣の浅井ですが?」
今、久しぶりに上を向けたような気がした。