10年遅れのラブレター【停滞中】


「あー!歌った歌った!!」


ぐーんっと腕を夜空へと伸ばした遥の声はちょっぴりかすれていて。

まあ、たっぷり4時間ノリノリで歌いまくっていたからね、この人は。




「美波ってば歌うまいくせに、大勢の前で歌うの嫌がるよねー?」


「だ、だって…緊張するし……」


確かにあたしは、遥と2人や心知れた少数の友達の前では堂々と歌える。

でも、今日みたいに大勢の前で1人で歌うとか絶対に無理!特に今日は笹岡くんもいるし…緊張しすぎて歌どころじゃないよ……





「……脈ありだと思うんだけどなー」


「え? なんか言った?」


「…ん?ううんっ、なんでもない」


ボソッと独り言のように呟いた声はあたしには聞こえなくて。

もう一度言ってほしかったけど結局、遥にはぐらかされてしまった。





「……(美波が自分でコクんなきゃ意味ないしね、あたしは黙ってよっと)」



遥の本当に思っていたことなんて、気づかずに…。