「あー!歌った歌った!!」
ぐーんっと腕を夜空へと伸ばした遥の声はちょっぴりかすれていて。
まあ、たっぷり4時間ノリノリで歌いまくっていたからね、この人は。
「美波ってば歌うまいくせに、大勢の前で歌うの嫌がるよねー?」
「だ、だって…緊張するし……」
確かにあたしは、遥と2人や心知れた少数の友達の前では堂々と歌える。
でも、今日みたいに大勢の前で1人で歌うとか絶対に無理!特に今日は笹岡くんもいるし…緊張しすぎて歌どころじゃないよ……
「……脈ありだと思うんだけどなー」
「え? なんか言った?」
「…ん?ううんっ、なんでもない」
ボソッと独り言のように呟いた声はあたしには聞こえなくて。
もう一度言ってほしかったけど結局、遥にはぐらかされてしまった。
「……(美波が自分でコクんなきゃ意味ないしね、あたしは黙ってよっと)」
遥の本当に思っていたことなんて、気づかずに…。
