……そのことがなぜ、黒水晶の封印と関係あるのだろう?

イサは恥を承知で素直に尋ねた。

「母さんが、なぜ……?」

レイルは、「相変わらず何も知らないんだな」とイヤミを言い、あきれたようにため息をつくと、続きを話した。

ちくちくトゲのあるレイルの言動を受け止め立ち向かうように、イサは表情を堅くする。

レイルの言葉を、一つ残らず聞き取れるように……。

「お前の母親は、ヴォルグレイトにこう説明したらしいな。

『レイナス様に魔法薬を作ってほしいと頼んだが断られた』と。

それはウソだ」

「ウソ……!?

母さんの作り話だということか?」

「そうだ……。ヴォルグレイトはルナの言い分を信じて疑わず、レイナス様だけを責めていたけどな。


お前の母親は、たしかにアスタリウス城に足を踏み入れた。

でもそれは、レイナス様に薬の処方を頼むためじゃない。

アスタリウス城のどこかに隠されている黒水晶を探し、奪うためだったんだ」

「そんな……!! 母さんが……!?」

イサはショックで立っていられなくなり、その場で足を崩し座り込んでしまった。

父だけではなく、亡き母までもが、親交を結んでいるアスタリウスに対し背徳的な行いをしていたなんて――。


「……イサりん。

あなたのお母様が黒水晶を盗もうとした姿を目撃したのは、その時アスタリウス城内の見回りを言い付けられていた私なんです」

黙って2人の会話を聞いていたフェルトが、申し訳なさそうに告げた。