どこから吹いているのか分からない強風で、マイのドレスと髪は激しくなびいていた。
その風はマイの意思で動かされているかのように、ディレットにも強く吹き付けている。
「あれは……!?」
イサはある物を発見。
マイの頭上に、黒くて丸い物が浮遊していた。
手のひらほどの大きさのそれは、マイの全身から放出されている紫と黒を混ぜたおどろおどろしいオーラを吸収し、空の闇を濃くしている。
剣術師のイサは人のオーラの色を見ることができるが、その力は魔術師ほど高くはない。
ゆえに、こんなにもくっきりマイのオーラが見えたことに彼は身震いした。
見るからに穏やかではない光景。
「もしかしてあれが、父さんが長年探していた黒水晶なのか!?」
黒水晶がマイのオーラを吸い込むにつれ、辺りは暗く重たい空気に包まれた。
雲や太陽、地に咲く草の緑すら見えない。
マイの顔も、無表情に変わっていく……。
「マイ! 聞こえるか!?
返事をしてくれ!!」
ただ事ではない。
そう思ったイサは、ノドが乾いてセキが出るまでマイに声をかけ続けたが、彼女が返事をすることはなかった。


