ヴォルグレイトとイサ。
それ以外の人間の動きは停止している。
「ヴォルグレイト様、剣を収めて下さい」
静寂を切り裂くような、女性の低い声。
イサはそちらを向き、
「エーテル……!
これは、俺と父さんの問題だ。
エーテルは手を出さないでくれ!」
「そういうわけにはいかないの。
私は、ヴォルグレイト様…いいえ。ガーデット帝国現国王を処刑するよう、国に命令されたから」
「えっ!?」
イサをはじめ、マイ達も、エーテルの言葉の意味を理解できなかった。
どのようにして、そんな状況になったのだろう。
ただ一人、状況を理解しているヴォルグレイトは、ノドの奥を鳴らしククッと笑った。
イサはそちらを振り向く。
「父さん……?」
「ふふふ……。エーテル様がここに来たということは……。
ルーンティア共和国の者が、セレス王妃とケビン国王の居場所を突き止めた、ということだな……」
セレスとケビンは、行方不明になっていたエーテルの両親のことである。
「ヴォルグレイト様は、エーテルのお父さん達がいなくなってしまった件に関わっているんですか!?」
マイは叫ぶような声でヴォルグレイトに訊(き)いた。


