「そんな……!」

テグレンの言い分に、マイの気持ちはついていかなかった。

親子で闘うなんて、悲し過ぎる……。


「大丈夫。イサには傷を付けさせないから」

落ち着いた女性の口調。

突然、マイとリンネに話しかける者が現れた。

「エーテル……!」

久しぶりに会えた友達の顔を懐かしく感じ、マイは喜びの笑みを見せる。

リンネはエーテルに抱きつき、すがるような声で、

「エーテルお願い!

ヴォルグレイト様を止めてちょうだい!

イサが……!!」

涙を流すリンネと、無表情なエーテルを交互に見て、テグレンは尋ねた。

「あんた、どうしたんだい、こんなところで……!」

「今は時間がないから、後で話すわ。

ヴォルグレイト様を止めてくる」

エーテルはそれだけ告げると、一瞬のうちに人垣を飛びこえた。

彼女が人垣の向こうに降り立った瞬間、群がるように決闘を見ていた兵士達の動きが停止する。

エーテルが魔術を使って、人々の動きを止めたのだ。


マイとリンネ、テグレンは、動かなくなった人々の間を通り抜け、イサとヴォルグレイトの姿が見える位置まで移動した。

イサは肩で息をし、苦しそうな表情をしている。

彼にはもう、攻撃する力はなさそうだ。

終始余裕の表情でイサの相手をしていたヴォルグレイトも、すぐさま城の異変に気付き、険しい顔で辺りを見回す。