イサ達の周りには、次第に人垣ができた。

家臣や兵士達が、決闘の成り行きを見守っているのである。


人垣のすきまからイサの様子を見ていたマイは、テグレンの背後で言った。

「ヴォルグレイト様は、イサのお父さんなんでしょ?

ダメだよ、こんな戦い、やめさせなきゃ……!


ヴォルグレイト様はまだ本気を出していない。

イサ、押されっぱなしだよ……。

このままじゃ、イサの身が危ない……!」

涙ぐむマイ。

彼女の横で不安げな表情のリンネ。

テグレンは二人の背中に手をあてた。

「マイ、リンネ。よく覚えておきな。

城の主とその息子は、親子なんだけど親子ではないんだ。


例えばの話、ヴォルグレイト様の思想でガーデット帝国の民を危険にさらすような事態が起きれば、イサは全力でヴォルグレイト様を止めなくてはならない。

親子関係があることを頭の中から一切無くして、戦わなきゃいけないんだよ。

国民を守るために。

それが、国を治める者の宿命なんだよ。


私達は、それを止めてはいけないんだ。

だから、私もあの時……」

アスタリウス王国の国王と結婚したいと言っていた、テグレンの娘·エリン。

テグレンは、エリンの結婚に反対した理由を話そうとした……。