家臣にうながされ、ヴォルグレイトは謁見(えっけん)の間に着いた。

先に来ていたイサが、弾かれたように入口を振り向く。

「父さ……国王!」

「イサ……」

ヴォルグレイトは眉間にシワを寄せてイサを見つめた。


カーティスの遺体は、現場を保存し犯人の手かがりを探すため、まだ道場にある。

謁見の間に来る直前、道場でカーティスの死を確認してきたイサ。

彼は、恩師であり母親代わりだったカーティスを殺害した人間はヴォルグレイトに違いないと思った。

「国王…! カーティスをあんな風にしたのは、あなたですよね!?

正直に話して下さい!!

昔のこと……。私は全部、知ってしまったんだ!!」


「イサ……!!

何を言ってるんだい!

ヴォルグレイト様はアンタの父親だろう!?」

イサについて来たテグレンが、彼の腕をつかんで止めた。

テグレンは、普段と違うイサの様子が気になり、部屋でジッとしていられず、強引にここまでついてきたのである。

「テグレン、離してくれ!」

取り乱すイサを見て、周囲はざわついた。

「ヴォルグレイト様が、カーティス様を……?」

「そんな、まさか……」

謁見の間に集まった家臣や執事、兵士達は、互いに顔を見合わせている。


イサとヴォルグレイトの間に、しばし重苦しい沈黙が流れた。