黒水晶


一同がしんみりする中、軽く扉をノックする音が響いた。

執事が、ケーキや紅茶を持ってきたらしい。

手際よく、テーブルの上に並べられたティーセットとケーキ。

部屋中に甘い香りが漂うと空気も変わり、悲しげだった皆の表情も和らいだ。


執事が出ていくと、テグレンは普段の明るい顔つきで、

「ま、娘のことだ。

大人しく見えて気の強い子だったからね、きっと、どこかで幸せにやってるさ。

それに私は、マイのことを本物の孫だと思っているからね」

それを聞いたマイとリンネはホッと安心してテーブルについたが、イサは違った。

チェストの前に立ったまま、彼は涙を流している。

“ごめんなさい。テグレン……。

俺の父親は悪い感情をコントロールすることが出来ず、あなたの娘とその旦那様を、殺してしまいました…………”


「イサも、食べましょう?」

リンネがイサに声をかける。