黒水晶


ヴォルグレイトの恨みをかって、レイナス共々、エリンは禁断剣術によって危められた。

フェルトとカーティスから聞いた過去の話がよぎり、イサの顔は勢いよく青ざめた。

テグレンは、娘が生きていると信じている。

旅の途中、彼女は何度か、娘との楽しい想い出話を口にしていた。


リンネも写真に興味を持ったのか、マイのそばに来た。

写真を見てはしゃいでいる彼女達を横目に、テグレンはつぶやいた。

「親バカって言われるかもしれないけど、我ながら、可愛い娘だなぁと思うよ。

なのに、どうして、私はあの時、あの子の結婚に反対してしまったのかねぇ……。

なんで、あの子がつかんだ幸せを、一緒に祝ってやれなかったんだろう。


あの子の気持ちをちゃんと理解してあげていたら、あの子は今ごろ私のそばにいて、一緒に料理を作ったり、孫の顔を見せに来てくれたかもしれないのにね」

「テグレン……」

マイにつられるように、リンネも切なげに眉を下げる。

初対面のリンネにも、なんとなく事情が伝わったようだ。