黒水晶


写真を見るため、イサもテーブルを離れ、マイのそばに行った。

背後に迫ったイサの気配に、マイの心臓はトクンと甘い音を立てる。

緊張するのに、嫌な緊張感ではない。

“なっ、なんだろう。これ……”

熱くなっていく顔をなんとか冷やすため、マイはイサに声をかけた。

「テグレンの娘、綺麗だよね。

ホント、テグレンにそっくり」

「ああ…………」

写真の中で寄り添うテグレンとテグレンの娘。

微笑ましい家族写真を見て、イサの体は硬直した。

“この人は……!!

間違いない……。

エリン王妃だ!!”

音を立ててツバを飲む。


テグレンの横で微笑む若い女性。

彼女は、レイナスの妻。

ルミフォンドとリンネの母親でもある、エリンだったのだ。