黒水晶


物思いにふけるカーティスの耳に、どこからともなく、男の低い声が響いた。

「残念だが、その願いは叶わない。

まずは、お前に死んでもらう」

「な……!!」

見えぬ敵に向け、カーティスは高等剣術を発動しようとした。

長年使ってきた愛用の刀に全身の力を込めると、青白い炎が生み出された。

それを、ためらうことなく相手に投げつける。

しかし、カーティスの攻撃は、今まで見たことのない術で破られてしまった。

「くっ……!」

はねかえってきた炎を自分の刀で受け止め、カーティスは何とかその場で踏ん張った。

男に対抗しようとしたが、相手の方が格段に強い。


両者の攻撃がぶつかるたびに、道場には突風が吹いた。

頑丈な壁も、吹き飛びそうである。

平屋建て道場の屋根がきしんでいる。

頼りないその音は、カーティスの体力が残り少ないことを示しているようだった。


そのうちカーティスは、攻撃するのもままならなくなった。

明らかに劣勢。

相手の攻撃から身を守るので精一杯だった。


「今まで、よく持ちこたえたな」

夕焼けの射す薄暗い空間に、男の声が不気味に響いた。

「うわぁあああぁ!!」