「もしそうだったとしたら……!
まだ、父さんの野望を阻止できる可能性はある、ってことだよな…?
父さんの野望を実現するためには、マイの魔法と、自然の神達の力が鍵となりうる……!?」
「そうですね。
私の推測が当たっているのであれば、その可能性は高いです」
イサは駆け足でその場を後にし、マイの元に向かった。
カーティスは、すっかり凛々しくなったイサの後ろ姿を、感慨(かんがい)深げに見つめた。
「イサ様。全て、あなたにかかっています。
この国の未来を変えて下さい……。
私は、あなたが国王となるその日まで、ここで国の変化を見届けたい。
ヴォルグレイト様のあやまち。
数々の悪影響。
それらを断ち切る瞬間を確認してから、この世を去りたいのです……」
生(お)い先短いカーティスは、自分の寿命が残りわずかであることを憂(うれ)いた。
ガーデット帝国に住む男性の平均寿命は、60~70歳。
周りの人間から、剣術師範だから長生きできるに違いないと言われるが、カーティス自身は、自分の年齢を痛感していた。
最近、道場での稽古を終えると、全身が重たく感じる。
数年前なら、なんてことはなかったというのに。
“老いが、こんなにも不安になるなんてな……。
一日でも長く、イサ様のことを見守っていられますように……”
60を過ぎているカーティスが、日々そう願ってしまうのも仕方がなかった。


