イサは真剣な面持ちでカーティスの話に耳を傾ける。
「私は、ヴォルグレイト様が生まれる前からこの城に仕えております。
魔法のことは知らなくても、ヴォルグレイト様の胸中を推し量るのには自信があります。
完璧な読みではないかもしれませんが、参考までに……。
最近のヴォルグレイト様は、何かに行きづまっておられる様です。
それは、公務や外交の影響ではありません。
裏ではどうなっているか分からないとはいえ、今のところ、表面的にはどの国とも友好的な関係を築いておられますから……」
「やっぱりそうか。
父さんが俺に言っていたこと……。
『見えない軍勢が押し寄せてくるという密告があったから、城の警備を強化した』とか、
『もしもの戦に備えてガーデット城にマイ様を招きたい』という話は……!」
「ええ。お察しの通り、ヴォルグレイト様の自作自演……。
イサ様の意思でマイ様を連れて来させるために、そう言うしかなかったのでしょう。
イサ様が護衛の任務から戻ってみえる前、ヴォルグレイト様から城の人間全員に、敵の侵入を警戒するよう、指示が出されました。
こんなに平和な状況なので、家臣や兵士達の中には、ヴォルグレイト様の発言を疑う者も、いるのです。
ただ、ヴォルグレイト様に逆らえる者など一人もいませんから、皆、従順さを装っているだけ。
最近のヴォルグレイト様が悩む理由といえば、ひとつしかありません。
野望を叶える計画がスムーズにいっていないから……と、見てよろしいかと。
我々に言えないことなら、なおさら考え込むはずです」


