黒水晶


イサは、旅の途中に出会ったローアックスという魔術師の話を思い出した。

ローアックスは、マイ(ルミフォンド)についてこんな発言をしていた。

『その魔法使いは、ガーデット帝国に利用されようとしている』

それだけでなく、彼は、ルーンティア共和国に敵意を抱いていた……。

フェルトの話によると、ローアックスはすでに死んだ人間。

妙な魔術によって屍(しかばね)を操られている、という話だった。


イサは眉間にシワを寄せ、

「ローアックスに直接聞きたいけど、もう無理だ。

彼は、俺達に真実を話そうとした瞬間、まるで何者かに見張られていたみたいに、体を消滅させた。

あれは、雇い主に口封じをされていたと見て、間違いないだろう。


ローアックスを頼れない以上、父さんの目的を知る手がかりはない……」


カーティスは一縷(いちる)の望みをかけて、こう話した。

「私は剣術しか心得ておりません。

ゆえに、魔法使いのことに関しては無知なので、こんなことは言いづらいのですが……。

ヴォルグレイト様の野望のキーになるのは、マイ…ルミフォンド様の存在なのではないかと思います」