黒水晶


イサはゆっくり立ち上がる。

「そうだな……。

レイナス様の考えは、もう、確かめようがない……。

悔しいけど……。


父さんの陰謀(いんぼう)をこれ以上進ませないために、まずは、自然の神達を。

いや、自然オーラの異常を食い止めないと……!

父さんが、何らかの方法で自然オーラを操作しているに違いない!!」

「そうでしょうね。

ですが、ヴォルグレイト様がどういった方法で自然オーラを操っているのか、私にもわかりかねます……。

ヴォルグレイト様は、私にも計画の内容を話したことは一切ありません。

ルナ様の治療や、アスタリウス隠滅(いんめつ)を行った時も、常にお一人で考え、独断で動いてみえました。


魔法使いの骨を使っているという可能性もありますが……。

そんな大がかりなことを毎回毎回していたら、そのたびに世界中の人間の記憶を消すことになります。

そうなれば、いくら大量に入手したとはいえ、ヴォルグレイト様が手に入れた魔法使いの骨はすぐに無くなってしまいます。

それに、イサ様も知っての通り、禁断剣術を使うと術師の寿命は縮みます。

大きな力を使えば使うほど、命のメモリは大幅に減ります。

妖術を使用しても、同じこと。


きっと、別の方法でオーラを操作しているのでしょうが、それがどんな方法なのか…………」

イサは目を見開き、

「自然オーラのことは、まだ分からない。

でも、もしかしたら……!

あまり考えたくはないけど……。

父さんが、マイを…ルミフォンドをこの城に連れて来るよう命令してきたのには、過去のことが関係しているかもしれない。

邪魔な国はすでに滅ぼしている。

父さんの今の目的は、なんだ……?


仮に、魔法使いの骨が目当てだとするなら、俺やエーテルに護衛などさせず、父さんは直々にマイを殺しに向かったはずだ」