黒水晶


「ヴォルグレイト様、正気に戻って下さい!!

いにしえと今の時代では違います。

昔は、自らが生き延びるため、魔女狩りをする人間もいました。

ですが今は、文明が発達し、人々は変わりつつある。

倫理観が問われ、理性を重んじる思考が大切だとされています……!

そんなやり方で国を存続させているなんて知ったら、家臣達も、国民も、ひどく悲しみます!


それに、そのことが他の者に知れたら、ヴォルグレイト様は国王でいられなくなる……!!

だいたい、アスタリウス王国とトルコ国を滅ぼしたのがヴォルグレイト様だと明るみにでるのも、時間の問題です……。

私が秘密にしたところで、いずれ必ず、誰かが気付きます!」

「ふふ……。問題ない」

ヴォルグレイトは余裕の表情でカーティスを見た。

野心がむきだしになった彼のまなざしには、冷ややかさが漂う。


「魔法使いの骨には、人間の記憶を部分的に消す力もあるのだ」

そう言うと同時に、ヴォルグレイトは剣を構えた。

「何をなさるおつもりですか!?」

「魔法使いの骨に禁断剣術の力をとけあわせ、世界中の人間の記憶を失くすのだ。

さすれば、二つの国の滅亡が歴史に残ることもあるまい。


骨は、残り多い。

まだまだ使い道があるぞ、ははははは」

ヴォルグレイトの顔面にかかげられた剣から、真っ白な光線が四方八方に飛散した。

あまりのまぶしさに、カーティスは思わず目をつむる。

初めて見る類の、まがまがしい光。

これが、禁断剣術のうちのひとつ。

魔法のような能力で、思いのまま、望む場所に能力を飛ばすことのできる術……。

長年、剣術師範として生きてきたカーティスでさえ、見たことのない剣術だった。

この瞬間カーティスは、禁断剣術の恐ろしさを身をもって知った。