黒水晶


隣のアスタリウス王国が没落(ぼつらく)したことで、ガーデット帝国とルーンティア共和国の人々は恐怖を感じていた。

予告なく襲ってくる、正体不明の恐ろしい軍勢。

“次は、自分たちの国が襲われるかもしれない……”


滅ぼされた魔法使い一族に、深く同情する声もたくさん上がった。


剣術師範カーティスも、アスタリウス王国を統治していたレイナスとエリンに深く同情していた。



アスタリウス王国が没落して数ヶ月後。

ガーデット城最上階にある、国王専用執務室でのことだった。

ヴォルグレイトは、そこで机に向かい仕事をしていた。

何枚あるのか分からない書類に次々目を通していると、カーティスが入ってきた。

「ヴォルグレイト様。

アスタリウス王国を滅ぼし、レイナス様達を危めた軍勢の正体は、まだ突き止められないのでしょうか?」

「………………」

ヴォルグレイトは、書類を手にしたまま、無言でカーティスを見やる。

「早く、謎の軍勢の正体が分かるといいですね。

このままでは、亡くなったレイナス様とエリン様が浮かばれません……。

ルミフォンド様とリンネ様も、両親を亡くして深く悲しんでおられます。

お二人ともまだ幼いというのに、可哀相で仕方ありません……」


イサに助けられて以来、ルミフォンドとリンネはガーデット城の部屋に住まわせてもらっていた。