アスタリウス王国襲撃の後、レイナスとエリンも殺されたのだとウワサが流れたが、真実かどうかは分からない。
死体が出てこない以上、確かめようがない……。
ただ、そんな悲惨(ひさん)な出来事を経ても、アスタリウス王国の後継ぎであり、次期王位を継承するはずだったルミフォンドとリンネは無事だった。
イサが彼女達を守ったのである。
襲撃の日、イサはいつものように、アスタリウス城の庭園で双子姉妹と遊んでいた。
そこへ、何の前触れもなく謎の軍勢が押し寄せてきた。
彼らは、城内や街を歩く魔法使いを、剣を振り回し容赦なく切り殺していく……。
目の前の残酷な場面に目をつむりながら、イサは姉妹二人の手を引いて人の来なさそうなアスタリウス城の倉庫に隠れた。
逃げ延びたと胸をなでおろしたのも束の間、イサ達はすぐに見つかってしまう。
見慣れぬ鎧(よろい)を被った一人の兵士が、まるでイサ達の息遣いを感じ取ったかのように倉庫の扉を壊して入ってきた。
彼はなぜだかイサを避(よ)けて、ルミフォンドとリンネ達にだけ剣を振り上げようとする。
そこで、イサが兵士の前に割り込み、彼女達を庇(かば)ったのだ。
「やめて!!
ルミフォンドとリンネを殺さないで!!」
幼い子供の言葉だから、と、情けをかけてくれたのだろうか?
予想外にも、兵士はイサ達を見逃し、去っていく。
イサは二人の手をつかむと、恐怖で震える体で一生懸命彼女達を誘導し、ガーデット城へ逃げたのだった。


