黒水晶



葬儀に参列したレイナスは、立ち尽くすヴォルグレイトのそばに寄り、ルナの棺(ひつぎ)に視線を落とした。

「ヴォルグレイト……。

ルナ様のことは気の毒に思うが、お前は国王だろう。

なぜ、城のことを何もしない?

全てカーティスや家臣達に任せ切りだそうだな……。

こんな時こそ、悲しみを抑え、国王として毅然(きぜん)としていなくてはならないんじゃないのか?」

レイナスの言っていることは正しい。

今日だけではなく、ヴォルグレイトは長い間、城の公務に手をつけていなかった。

今回も、自分の妻·ルナ王妃が亡くなったというのに、記者会見や葬儀の指揮を全て家臣任せにしている。

国王失格だ。

そんなことはわかっているが、人間、正論のみで生きられるほど賢くもないし、常に理性的ではいられない。


ヴォルグレイトは、レイナスの胸元に両手を打ち付けた。

「お前があの時魔法薬を作ってくれていたら、ルナはこんな目にあわずに済んだんだ!

今も、元気に生きていたかもしれない……!

なぜ、なぜ!! あの時助けてくれなかった!?

どうして……?

ルナ以外の瀕死(ひんし)の人間は助けていたのに、なぜ、ルナだけ見殺しにしたんだ……!」