黒水晶


途絶えることのない参列者の影。

イサは、母親の死を強く実感した。


普段、ガーデット帝国とは親交のない王族や伯爵家の人間が大勢来ている。

城には常に、兵士や執事など、たくさんの人間がいるが、数えられないほどの人間が城に訪れているのを見たのは、イサにとって、この時が初めてだったのだ。


棺(ひつぎ)の真上に掲(かか)げられたルナの遺影を見て、イサは涙を流し続けた。

すると、ルミフォンドがイサの左手を優しくにぎり、もう片方の手でイサの頭をなでた。

「イサは一人じゃないよ。

ルナ王妃が亡くなったのは寂しいけど……。

私がいるからね。

私は、ずっとずっと、ずーっと、イサのそばにいるから」

イサはルミフォンドに抱きつき、思いきり甘えた。

「ありがとう、ルミフォンド。

ルミフォンドは、ずっと僕のそばにいてね」


イサは、物心つく前からルミフォンドやリンネと遊んでいた。

彼はいつの間にか、ルミフォンドに恋心を抱いていた。


ルミフォンドとリンネは、瞳や髪の色、背丈まで同じの一卵性の双子だ。

違うのは、髪型くらいで……。

生まれつき、リンネは直毛。

ルミフォンドには緩く天然パーマがかかっていた。