黒水晶



ガーデット帝国のルナ王妃が亡くなったことは、その日中に世界中へと知れ渡り、波紋(はもん)を呼んだ。


ルナの葬儀には世界各国の王が参列し、広大な敷地を構えるガーデット城内とその庭園は、たちまち、大勢の人の姿で埋めつくされた。


カーティスや執事達が参列者の相手をし、葬儀の進行をする。


ヴォルグレイトは、終始、魂が抜けたかのようで……。

彼は、ルナの棺(ひつぎ)の前に立ちつくしたまま、誰とも会話を交わさなかった。


ヴォルグレイトの傍(かたわ)らで、イサは涙を流していた。

「ルナ王妃……。

僕をおいていかないで……」

ヴォルグレイトは、イサの泣き顔を見てさらに打撃を受けた。

父親として、息子を元気づける余裕もない。


「イサ様、こちらへ……」

カーティスはイサの手を引き、棺から遠ざける。

今は、ヴォルグレイトを一人にするべきだと判断したのだ。



魔法使いの国·アスタリウス王国の国王レイナスも、葬儀に参列していた。

妻エリン、娘のルミフォンドとリンネの三名を連れて。


レイナスがカーティスと挨拶を交わす横で、ルミフォンドとリンネは、泣きじゃくるイサを励ましていた。