今にも倒れそうなヴォルグレイトを城で出迎えたカーティスは、ひどく心配した。
「ヴォルグレイト様! お顔が真っ青でございます!
少し横になられた方が……!」
「すまないな、カーティス……。
お前には様々な負担をかけてしまっているのに、心配までかけてしまって……。
私は国王失格だな……」
自嘲(じちょう)気味に笑うヴォルグレイトの肩を支えて、カーティスはルナが眠る部屋へ同行した。
カーティスにも、ルナの命が短いことがわかっていた。
なので、出来るだけヴォルグレイトとルナを二人きりにするよう、気遣う。
ヴォルグレイトが部屋に入った気配を感じたルナは、ベッドの上で瞳をうすく開き、唇を動かした。
ルナの声は出なかったが、
「おかえり」
そう言っているのが、ヴォルグレイトには伝わった。
ルナが話せなくなって以来、ヴォルグレイトはルナの唇の動きから、彼女が言おうとしている言葉を読めるようになっていたのだ。
一年前と見違えるほどやせ細ってしまったルナの手を両手でにぎり、ヴォルグレイトは言った。
「ごめんな。私はお前の夫だというのに、何もしてやれなくて……。
日に日に弱るお前の姿を、こうして見ていることしかできない。
ごめんな……。ごめんな……」
ヴォルグレイトは、ベッドの上で仰向けになったルナの二の腕に頭を乗せ、涙が涸(か)れるほど泣いた……。
そんな夫の心情を知ったところで、ルナには何もできず、ただただ、悲しげな瞳で彼を見つめることしかできなかった。


