黒水晶


今回のルナの病は、科学を用いた治療では限界があった。

当時の科学医療は、今ほど発達していなかったというのも、その理由の一つだ。

なので、ルナの病を治すには、魔法使い(魔女)達が作る強力な魔法薬の力がどうしても必要だった。


今までもルナは、科学医療と併(あわ)せて魔法薬での治療を行ってきたが、いっこうに良くならなかった。

最終的にルナは、強力な魔法薬を求めて、アスタリウスの国王·レイナスに、直々(じきじき)に頼みに行ったのだ。

だが、その頼みは断られてしまった……。


ヴォルグレイトは、あまりに冷た過ぎるレイナスの対応に納得できず、戦から戻った形(なり)のまま、アスタリウス城に出向いた。

挨拶してくる執事達を無視し、謁見の間に突き進む。

「レイナス!!

いるか!?」

二つ並んだ玉座。

レイナスの隣には王妃·エリンが腰かけていた。

エリンの両腕には、イサと同い年になる彼らの娘二人がおさまっていた。


レイナスはヴォルグレイトの言おうとしている事を察していた。

「ヴォルグレイト……」

「頼む……! ルナのために、強力な魔法薬を作ってくれ!

金品ならいくらでも渡す…………。

なんなら、ガーデット帝国の領地をおさめる権利と、王位継承者にしか伝承されない剣術も教える……!

だから、ルナを助けてくれ……。


このままでは、ルナはあと半月も、もたない」