黒水晶


魔法で透明の防御(ぼうぎょ)壁を展開し、マイは自分の身を守った。

グレンと名乗る、炎の守り神。

油断すれば、何をしてくるかわからない。


グレンは、マイの魔法防御を見て大きく目を見開いた。

「わー。すげーな!

魔法使いが作った防御壁見るの、かなり久しぶりー。

やっぱり、人間の魔術と比べても、純度がケタ違いだなー!」

「敵にほめられても全然嬉しくないんだけど……」

マイは仏頂面(ぶっちょうづら)で引き気味に返す。

グレンは人なつっこい笑顔で、

「かわいい顔してるクセに、言うことキツイねー。

そんなんだと、男にモテねーよ?」

「なっ……!!」

軽口なグレンを相手に、マイの調子は狂わされそうになるが、負けじと言い返した。

「グレンにモテたって、ちっとも嬉しくないし!」

「うそー! 俺って、そんなに魅力ないんだー……。

人間には何て思われてもかまわないけど、魔法使いに嫌われるのはつらいなー」

「グレンがそういうキャラだからでしょ!?」

すでに、マイはあきれ気味である。

彼女の言葉に元気をなくしたかと思えば、次の瞬間、グレンは生き生きした瞳で、

「んー……。

なんだか俺、戦闘する意欲なくなってきた。

マイと話すのが楽しくって!」

「私はそんなつもりないんだけどな……」

マイはため息をつく。

ノンキなグレンの態度に、対抗心に満ちていた彼女も毒気(どっけ)を抜かれてしまった。