イサは、ついに知ってしまった。
フェルトが握る、ガーデット帝国の情報全てを……。
彼は、フェルトの話すことを信じた。
信じたくはなかったが、信じることで全てのつじつまが合うのだ。
フェルトとローアックスになじられこと、
ヴォルグレイトの険しい表情、
カーティスからの不穏な通信……。
フェルトの話は衝撃的過ぎて、イサはショックで足元をフラつかせたほど。
いつの間にかそこにいたレイルが、イサを支えた。
「ショック受けるのも、無理ないっすね。
イサ王子は、このことなんにも知らなかったんでしょ?」
レイルはイサをイスに座らせ、そう言った。
レイルはここに入ってくる前まで、フェルトとは違うルートでガーデット城内を偵察していた。
フェルトは青ざめるイサに言った。
「イサ。ショックなのはわかりますが、気をしっかり持って下さい。
君が、この国の運命を変えるんです。
君には、その才覚がある」
フェルトに聞いたガーデット帝国の隠された歴史を頭に流しつつ、イサは尋ねた。
「フェルト……。レイル……。
お前達は、俺を……ガーデット帝国の人間を、恨(うら)んでるか?」
「恨んでも恨みきれねーなっ」
吐き捨てるように答えるレイルを、フェルトが制止した。
「イサは悪くありません。
ヴォルグレイト国王は、自分の野望を実現させるためにイサに真実を隠していたのでしょうから……。
恨む相手はヴォルグレイトただ一人であり、イサやガーデット帝国の人々ではありません。
これからヴォルグレイト国王の悪行をどう食い止めるかが、全ての分かれ目になるでしょう」
イサは、二人の言葉を真摯(しんし)に受け止めていた。
“父さん……。
なんで、そんな大事なことを俺に黙ってた?
俺は、あなたの息子だろ?
次期、国王だろ?
あなたは、悪事の片棒を担がせるためだけに、俺に様々な教育をしてきたのですか!?”


