その夜、イサ達がマイの護衛を無事に終えたお祝いとして、ガーデット城では盛大なパーティーが行われた。

主催者は国王ヴォルグレイト。

参加者は、ガーデット帝国の家臣や兵士達。

ガーデット城下街の人々。

そして、ルーンティア共和国の人々。

皆、イサとエーテルに近づき、二人が護衛の任務を終えたことに対し、労(ねぎら)いや称賛の言葉を贈っていた。


マイのそばには、護衛も兼ねて、終始カーティス師範が付きそっている。

いつ誰が、マイを襲撃するか分からないからだ。


イサが様々な女性をエスコートしながらダンスや食事をしている姿を見つめ、マイはため息をついていた。


ヴォルグレイトは、息子の成長を前に嬉しそうに目を細め、人と離れ休憩するイサに近づいた。

「イサ。お前はゆくゆくはこの国の王になる人間だ。

様々な人間を見ておけ。

そこから、良い部分、ためになる要素を全て吸収するという気持ちを忘れるなよ」

「もちろんです」

迷いのないイサの瞳に、ヴォルグレイトはご満悦(まんえつ)の様子だ。

イサとヴォルグレイトが話している様子を遠目に見ていたマイは、やはりイサに対して疎外感を覚えずにはいられなかった。

二人の会話は聞こえないが、何を話しているのか、だいたい想像がつく。

今マイの目に映るのは、一緒に旅をしていたスイーツ好きの仲間ではなく、一国の運命を背負う王子だった……。

“私には、こんな場所に来る資格ないんじゃないかな……。

魔法を使えるってだけで、みんなは私を特別扱いして、敵から守ろうとしてくれるけど……。

カーティスさんにまで護衛される意味が分からない。

私は一人でも戦えるのに、どうしてここにいるんだろう……。

みんなの言いなりになって、何してるんだろう……”

イサがそばにいない。

それだけのことなのに、ひとりぼっちにされた気がして、マイはうつむいた。