今まで感じたことのない雰囲気に、マイとテグレンは気圧(けお)された。

イサは二人の方に振り向き、

「大丈夫。怖がることはない。

訓練を重ねてるせいで肉体はたくましいが、みんないい人達ばかりだから」

マイとテグレンの緊張はゆるむ。

前方を行くイサとエーテルにならう様に、マイとテグレンも壇上(だんじょう)に近付いた。

玉座に座っていたヴォルグレイトが立ち上がり、

「イサ、よく無事に戻ってきてくれたな。

エーテル様も、お元気そうでなにより。

今回、任務のためにイサに協力して頂き、誠に感謝する」

「礼には及びません……」

エーテルは綺麗な姿勢でおじきをした。

イサ達の会話で、この中年男性が国王ヴォルグレイトであるということがマイにもわかった。

ヴォルグレイトのそばで片ヒザをついているのが、剣術師範カーティスであるということも。


みんなの会話が止まると、カーティスはイサを見て言った。

「よくぞご無事で……。

イサ様。体は疲れておりませんか?

旅の途中、必ずしも宿を確保できたわけではないでしょう」

「この通り、何ともない。

カーティスが厳しい指導をしてくれたおかげで、無事にこの旅を乗り切れた。

ありがとう」

イサは朗らかに笑った。

師範と教え子の穏やかな会話の後、ヴォルグレイトはマイとテグレンに謝った。

「マイ様。そして、テグレン殿。

突如(とつじょ)このような形であなた方を城に招くことになってしまったこと、心からお詫(わ)び申し上げます。

ガーデット帝国とルーンティア共和国の非礼を、どうかお許し下さい」

そう言いヴォルグレイトは、マイとテグレンに頭を下げた。

マイはアタフタし、

「そんなこと、気にしないで下さいっ。

イサやエーテルと旅が出来て楽しかったですし、このお城も素敵だし、いいことばかりでしたからっ」

テグレンもそれを補足するように、

「そうですよ。ヴォルグレイト様のおかげで、一人暮らしだったマイにも友達ができました。

イサ様とエーテル様は、とても素晴らしい子で……。

逆に、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。

本当に、ありがとうございます」

出来る限り丁寧な口調を心がけ、テグレンは礼を述べた。