やがて、荒い息を吐きながら唸っていた猪の突進が完全に止まる。

翡翠の膂力が、猪の突進を上回ったのだ。

「すまんな」

猪を受け止めたまま呟く翡翠。

その片手が、川蝉にかけられる…。

「貴様も山の主ならば、弱肉強食の掟の中で生きてきた筈…無駄な殺生などせぬ…頂いた命は、余す事なく生徒達と共に血肉に変える…」

抜刀された川蝉の切っ先が。

「その命…『いただきます』」

感謝の意と共に振り下ろされた。