しかし、唯一の助けとなったのは、エリーの鳴き声によって他の者達がレオーネと八重の危機に気づいた事だった。

只ならぬ獣臭、そして騒がしい鳴き声を耳にした翡翠が、二人のもとに駆けつける。

「何をしている、貴様ら」

「翡翠先生!」

今にも追い詰められそうになっていた二人の前に姿を現す翡翠。

目前には、目を見張るほどの大きさの猪がいる。

闘牛よろしく前足で地面を掻いて、突撃しようとしている山の主。

それを見ながら。

「岩魚だけでは腹の足しにならんと思っていた所だ…」

翡翠は薄く笑った。