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「xを移行して、yを……───」
カリカリカリ
シャーペンの芯が紙の上を滑る音と、グラウンドで体育をやる笛の音と生徒の賑やかな声が聞こえる。
そんな中、窓側の席の俺は、先生の話す意味の分からない呪文の様な言葉達を、左から右へ聞き流しながら空を見上げた。
その時、今日は何かが起こる。そんな気がした。何の根拠もないのだけれど、俺の直感がそう言わせている。
「高瀬!」
「わっ!!」
ガタガタッ
俺は名前を呼ばれてビックリし、椅子から転げ落ちた。
「ったく、お前は。空を見ていて数学が出来るようになるのか?えぇ?」
「うっ…すんません」
イテテ…とお尻をさすりながら椅子を元に戻し、座り直す。ちっきしょー、笑いもんじゃねえか。
周りを見ると皆俺を見てクスクス笑っている。
「まあ、今日は綺麗な晴天だし。ボーっと見ていたくなる気持ちは分からんでもないが」
そう言い先生は授業を再開した。
…別に、俺は綺麗だから空を見ていた訳ではない。勿論、好きな訳でも。
ただ、憎たらしかった。この、広々とした、俺の全てを見透かしているような空が。
俺はもう一度空を見た。
否、睨み付けた。

