「お前はなんでそんなに頭良いんだよ?話ロクに聞いてないのに、余裕で答えやがって~。」
 ラリーは羨まし気に言っている様に思えるけれど、俺だってラリーが、スポーツ万能な所や、非常に顔が広い所には憧れる。ラリーは、ふぅと溜息を吐いた後、ニカっと笑いながら
「俺も勉強しないとなあ。もう夏休みに入るから、暇も少しはできるからな。取り戻すチャンスかも」
「・・・だよなぁ。俺も少しは勉強しようかな。」
 俺はラリーと同意見のつもりだったからそう言ったまでだが、ラリーは再び驚きに溢れた表情をした。それは、俺が全く勉強をしていないにも関わらず、指名されても素晴らしい解答をかましたことへの驚きらしい。
 ラリーは、見た目が派手で不良だ、と言う印象を持たれがちだけれど、部活では大活躍だし、勉強に対して「取り戻す」という、最初から必死になって好成績を残すよりももっと大変な事を、簡単に出来ちゃう奴だ。・・・と、隣に居る相方の凄さに改めて感動していたら、突然話が変えられた。
「夏休みと言やぁよ、ジョシュは休み中の予定あるのか?」
 と聞かれた。
・・・そうだ。夏休みだ。先刻もラリーは口にしたが、その時はあまりに感心していたせいか、反応しなかった。
 俺たちの通学するこの高校、カリフォルニア・ウェストン・ハイスクールの夏休みは二か月程。その夏休みに入るまであと数日というところだ。
「俺?んー・・・そうだな。叔父さんの家に何日か泊まるくらいかな。・・・他は特に予定立ててないよ」
「あぁ、そうか~!「あぁ、そうか~!ジョシュは、毎年のことだったな」
「うん。そう」




俺の父さんと母さんの結婚記念日が丁度、夏休みの半ばだから、二泊三日で海外旅行をする。みんなに言うと「海外まで行く」という所でビックリされるが、普段の息抜きというのもあるだろうから俺は構わず留守番。だけど、過去に親達が居ないすきにパーティーを開いたら、家中をめちゃめちゃに荒らされて、こっ酷く叱られた(まぁ当然の事だろう)。そして、それ以降はまた何かあったら大変だ、と家で留守番させてくれなくなった。それで、家から最寄りの叔父さんの家に泊まらせられる訳だ。(訳だ・・・と言っても、果たしてこの対処の仕方で合っているかは分からないけれど)それにプラスして、最寄りとはいえ余程でないと叔父さんに会いに行くことなんて無いから、ついでにもう一泊するというお決まり行事。(・・・やはり不思議な行事だ)
 ラリーの言った通り毎年恒例の事だが、言っちゃ悪いけれどこれと言って楽しい訳でもない。
「まぁ、頑張れ」
俺の肩をポンと叩いて優しげだがよくわからない笑顔でラリーが言ったことに対し
「何をだよ」
とツッコんだ。
その後も、俺達は込み合う廊下を楽しく話しながら歩いた。