第一章:退屈
 
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 高校生活は至って普通。
普通過ぎて、此の頃ならつまらなさを感じている十六歳の青年
ジョシュ・スウェッチャーは、退屈そうに頬杖を突きながら数学の授業を受けていた。


最近は特別に楽しいことを求め、勉強になんか関心を持てない俺は、成績も微妙なところだし得意な事は別にない。
 趣味と言えば小説を書くことだ。でも、それすらもなかなか進まなくて続かないものだから、なんの取り柄もない男だなって自分で思う。身長は高いと言われるけれど、身長が高いと有利なスポーツのバスケとかだって、それを活かせる程の能力がない。
 自分的には「体を動かして筋肉モリモリ」に興味はなく、家でおとなしく歴史の本を読みふけっている方が良い。あ、勉強に関心を持てないとはいったけれど、歴史の勉強だけは別だ。俺は特に世界史が好きで、いつも外国の歴史について調べている。例えばエジプトの古代文明だとか、沢山の海賊達が名を轟かせた大航海時代だとか、日本の侍がいた江戸時代、大昔の恐竜時代なんかも好きだ。
 そんなのをみんなに言ったら、マニアックだって馬鹿にされて終わるだけだけど。周りのみんなが求めている「楽しいこと」は自分の好きな物を好きなだけ買い物するだとか、好きな子と毎日の様にデートするだとか、未成年で酒や煙草に手を出してみたりする。
そんなのばっかりだ。

 でも、俺が求めているスリルと楽しさとは、そんなものじゃないのだ。



 ボーっとしていた時、隣の席から俺の親友のラリー・マーティンが目の前に手を翳して軽く振りながら言った。
「お~い、ジョシュ~?」
 ラリーは、俺の幼馴染でずっと一緒に居る仲。ラリーは、俺と正反対の体育会系で、バスケ部に所属している。明るくて楽しい奴で粋な性格にプラスしてサラサラの金髪ヘアーに高い背丈。耳には合わせて6つのピアスをつけているし、服装もオシャレだ。俺の知っている生徒の中で一番クールであり人気者だと思う。
 それに、俺のことをよく理解してくれている大切な存在だ。
 俺は、いくらボーっとしているとはいえ、突然目の前に手が出てきたら、流石に気が付く。
「お前またボーっとしてたな。大丈夫かよ」
 ラリーは、少し笑いながら爽やかに言った。 そう、まただ。退屈な授業では毎度毎度ボーっとしているらしい。 
「そろそろ先生に指名されちまうぜ?」
 と、ラリーは半分あきれた様に言う。授業なんて受けるのが当然で、単位を取るのが学生にとって大切なこと。それ位分かっているからこそ、授業中の風景も先生も内容も面白くないのだろう。 
 ・・・その時、ラリーの言った通り、俺は数学の先生に指名された。だが、答えることは出来た(まして、完璧だと褒められた)。 
 退屈だった授業が終わり、廊下に出ると、ラリーがやってきた。