「無視してもいいけどさー
 痛い目見るよ~?」

ニヤッと笑いながら
強く腕をひいた。


「…離してっ」

「嫌がってるよー
 可愛いー」

なんて言いながら
自分の方へ引き寄せる。

 もう、いいや…

そう思って
体の力を抜いた。

そのとき、
身体がやわらかな
温もりに包まれた。



「何してんだよ」

低くて大きくないけど
スッと通る声が
頭の上から降ってきた。


見上げると
男の人が私を
抱きかかえいた。


「あ…、ひょ…
 豹さ、ん…」

豹と呼ばれる人の顔を
見た瞬間に
男の顔は凍りついた。


「何してんだって
 聞いてんだよ」

さっきよりも
声が低くなった。

「な、なんにも…。
 し、失礼しますっ!」


慌てていった男は
そのままどこかへと消えていった。




私はというと
豹という人の
腕の中で訳もわからずに
震えていた。