その瞬間、ドクンと何かが身体に響いた。 次第に襲ってくる、胸の苦しみ。 誰かに心臓を握られているような錯覚に陥る。 「くはっ……」 左胸を押さえ、その場にしゃがみこむ。 支えを失った自転車が、派手な音を立てて倒れた。 しかし、構っている暇など無い。 「お、おいっ!どうしたんだよ!?」 正紀の焦る声が降ってくる。 正直、それに反応する余裕もない。