泡沫眼角-ウタカタメカド-


脳ミソが一気に酔いを戻した。
フラリ、と立ち上がってもう一度目の前を確かめる。

それは、人間。
微動だにせずに倒れている派手な人間。


こんな路地に倒れているのなんて明らかに普通ではない。

それがどんなことを意味するか、わからないほど炯斗はバカではなかった。

立ち上がってから、床を見ないようにして、炯斗は後退った。

その時――

「、…ッ!」

炯斗を激しい頭痛が襲った。
胃の中身がズッとせりあがり、そのままゴミ箱に全てを吐き出した。

皮肉にも、それで本当に頭が少しすっきりとする。

そして改めて認識する。

――し、死んでる!

「うわぁぁあっ!」

それでも正しい判断力を持たない炯斗は、その場を、出来る限りの全速力で走り去った――。