「パケの中には5g程度の覚醒剤。それがだいたい30から40個見つかった。入手経路や密売の足取りは麻取の方に頼みたい」

「って、そこはあんたが決めるところじゃないでしょうが」

イライラと朋恵が呟く。
もしこれが他の本庁の人間に聞かれたらと高橋は気が気ではない。

「先輩、突っ込むのそこなんですか?」

「高橋」

イライラは絶えず続く。
ペンも出来ない、小言も言えない。
だったらどうやって発散したらいいのよ。

やり場のないストレスを今すぐ発散させること自体無理な話なのだが、知らんぷり。

――あ、


「はい?」

全身で嫌な予感を感じとりつつも、高橋は律儀に返事をした。

朋恵は前を向いたまま、いつもと何一つ変わらないトーンで爆弾を、落とした。


「帰っていい?」

「はい!?」

「あいつの顔みてたらイライラしてきちゃって」

どんだけ嫌いなんだろうか。
自分でも思う。
でも、朋恵にはこのイライラが何かの予兆に思えてならない。


――そう、聞いてしまったらあの狸をホントに一発殴りたくなるような。
そんな予感。


「どんな理由ですか! やめて下さいよ、僕が後で殺されますよ!!」

「……だって」

「ダメです!」