ヒヤリとした空気が酒で火照った頭に心地よい。
「あー……疲れた…」
ヘラりと、笑った。
どうでもいいけど、はしゃぐのってこんなに疲れることだったか?
ちょっと前まではそれが日常だった筈なのに。
たった数日、体験しただけの非日常が炯斗の日常への価値観を全く変えてしまっていた。
その炯斗の視界に、何かが舞った。
「!?」
頭が一気に冷え、背筋に汗が滲む。
――おい…嘘だろ…?
それは、紛れもない非日常へと続く一片の光。
炯斗は今一度体を起こして、光の正体を見ようとした。
しかし、頭は冴えても体は酔いを顕著に示し、足がもつれる。
「う、わっ…」
転んだ。
派手な音を立ててゴミ箱をいくつか倒してしまった炯斗は焦る。
――ヤバイ!
不運にもドミノの如く3つ連続で中身が散乱。
最悪、と毒づいて千鳥足を持ち上げ、片しにかかる。
最後のひとつ、というところで視線の先に何かが転がっていた。
「?」
ゴミ箱を立て、揺れる視界のまま覗きこむ。
瞬間、炯斗の足から力が抜けた。
「……う、うわああぁぁ!!」


