泡沫眼角-ウタカタメカド-

女子組にもすっかり“誰?”と浮かんでいるが、どこ吹く風。
遂にしびれを切らしたトシオが、割って入った。


「ちょっと無視しないで!!」

そこで男は、初めてトシオに気がついたように目を丸くした。

「よう、お前いたのか」

「クラクションで脅かして置いて!?」

「あー、そうだったそうだった」

「ひど過ぎますよ!!」

「まぁまぁ」

男は無情にもトシオの肩を叩いてカラカラと笑った。

「あの人誰なの?」

恵は炯斗にこっそり尋ねる。

「ああ、俺の幼なじみの奏(カナデ)兄ちゃん。隣ってかそこの家に住んでるんだ」

「へぇー……って、あの家!?」


和風の立派な門。
高い壁に囲まれた先には広い庭とそれに見合うだけの豪邸。

炯斗の指差す先には、大豪邸が佇んでいた。

「え、すごい人!?」

「うん、まぁ…凄いっていうか……うーん…」

「?」

いっていいのかな?
と歯切れの悪い炯斗。

恵がもう一度口を開こうとした時、彼が炯斗の肩に手をかけた。

「なんだ炯斗、水くさい。紹介してくれよ!」

「ん、ああ。こっち、大学の友達の舘見恵」

「どうも、友達の舘見です」


“友達”をやけにしっかり発音して、頭を下げる。