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その日の昼下がり。
言乃と恵は駅まで黒羽に送ってもらっていた。
この日はとある人物に話を聞きに来た言乃と恵。
その間を黒羽が取り持ってくれたのだ。
「まさか奥方に会いたいと言い出すとは思わなかったよ」
駅前の駐車場。二人を車から降ろしながら黒羽は感心したように二人を見つめた。
【どうしても、聞きたいことがあったものですから。黒羽さんのおかげで大きな収穫がありました。本当にありがとうございました】
画面に映した言葉とともに頭を下げられて黒羽はまた真っ赤になって否定した。
「俺は場を取り持っただけで、な、なんもしてねえからな! ああ!」
「黒羽くん、ダメだよ? ことのんには炯斗がいるんだから」
ニヤニヤと笑ってからかう恵に黒羽はさらに顔を赤く、行き過ぎて赤黒くなりながらそんなんじゃねえ、と叫ぶ。
素直じゃないね、と笑う恵にさえも目すら合わせられずに黒羽は車の中に戻ろうとする。
それを、寸でのところで言乃がポンと手を置くと、まるで電流が走ったかのようにびくっとしてこちらを向いた。
「なんだよ!?」
【あ、あの一つだけ聞かせてもらいたくて、迷惑だったでしょうか?】
「あ、いや…そんなことはない…です」
反対にしぼんでいく黒羽。
──黒羽くん、これだと難儀だなぁ
恵はほほえましくその場を見守るが、言乃の聞きたいことというのに意識を傾ける。
【兄弟というのはそんなにも複雑な関係なのでしょうか?】
画面を見つめる黒羽の表情がスッと落ち着く。
言乃も恵も一人っ子であり兄弟間でのもめごとというのは、理解しがたいものがある。
男ばかりの関係となれば、二人には尚更のことである。
少し眉間にしわを寄せながら、黒羽は考えて言葉を選ぶ。


