「友達に連絡できなくて警察官には電話できるなんて…あんたも変な奴ね」
思ったことをそのまま言えば、渇いた笑いしか返って来なかった。
『まあ、とにかくさ。俺が言ったのからどうにか禅在追いつめてくれよ。日が経ってるけど、大丈夫だろ?』
「隣の県じゃそっちの管轄だからなんとも言えないわね」
つれない言いぐさ。
もう少し優しくして挙げればいいのに、と高橋は思わずにはいられない。
実際、こちらからの情報提供ならば管轄が違えど話は聞いてくれるだろうに。
──でも、それが氷の女たる所以か
クス、と笑って高橋はまたメモに専念することにした。
「でも、今のところ比津次もなかなか怪しいところもあるわよ?」
『……』
「?」
沈黙の向こう側。わずかに何かが聞こえたような──
『わかった。ありがと。んじゃまた連絡するから! ことのんと恵のこと頼んだぜ!』
「あ、ちょっと待ちなさい!」
言う間もなく携帯からは無機質な音が通話終了を告げるのみ。
わかってきた謎があるかと思えば、まったく違うベクトルに人間が出てきたり。
結局謎は深まるばかり。
携帯を閉じて、朋恵はベンチに身を預けた。
出てくるのも溜息ばかり。
「夜が明けるのを待って、〇県警に問い合わせしましょうか?」
気が利く申し出に、朋恵は力なく頷く。
電話の内容を反芻する。
──屋代さんにしても、日奈山にしても、勲のこと…調べてみる必要あり、か
「しかし、日奈山くんはまだ何かを知っていそうでしたね」
高橋は、取り終えたメモを閉じていう。
同じことは、朋恵も思っていた。
「それに“また連絡する”って言ってたしね…何かを言ってくるつもりはあるみたいね」
「それまでに、もう少し僕たちで捜査を進めましょう」
「ええ、もちろんよ」
立ち上がる二人。
とりあえず今必要なのは十分な睡眠だ──。


