泡沫眼角-ウタカタメカド-


天城のただでさえ小さい目をさらに鋭くして、拳を握りしめる。
今金子がこの場にいたら、間違いなく殴りそうな空気だ。


「だが、この話は…ウチの核心に関わる。これを話しても罪状を持ってこないってんなら、話す」

「いいだろう」

「えっ?」


思わず声を上げたことを川井は瞬時に後悔した。全員からギロリと刺さる。


「いえ、何でもありません!」


天城は視線を戻したが、狸翠からは鋭く重い一瞥を食らった。

話を聞かない限りは、捜査が進まないのはわかる。
しかし、こうも簡単に取引していいものなのか

これでは警察の威厳というものが損なわれてしまうのでは?


――いいや、


川井はすぐにその考えを撤回した。


隣に座るこの人に、そんな考えがある訳がない。

だからこそ、狸翠は“暴れ狸”と称され問題児扱いされることが多い。

友人は狸の下につく自分に哀れみの言葉を投げ掛けたものだ。


しかし、そうであっても狸翠は多くの実績を上げてきた。

上を通しては進まない捜査を持ち前の立ち回りの上手さと鋭い勘で乗り越えてきたのだ。



――だから俺は後悔なんてしていない。


むしろ、この人の下に就けたことは何よりの幸せなんだ。


「…い、おーい。おーい!!」

――ガツン!

「いってぇ!」

「あ、戻ってきたな」


自分は長い物思いに耽っていたらしい。
視界が涙で滲む。
殴らなくてもよかったじゃないか。

満足げな狸翠の周りで再び笑い声が上がる。


川井は心に決めた。






さっきの言葉、全力で撤回しよう。