「集中しろこのバカタレ!」
――ゴンッ!
鈍い音と共に狸翠のげんこつが脳天に降りた。
これでもう何回目だろうか。
「いっつう〜」
「当たり前だ! ちゃんとメモとれ!」
「はい…」
言い返せるわけもなく。
周りから聞こえてくる笑い声に屈辱と自責の念が一気に押し寄せるのを感じた。
狸翠は大きくため息をついて、天城に謝った。
「話を戻す。さらに金子が比津次会のスパイだということは?」
「そりゃ、ちっと違うな」
天城はくぐもった笑い声を上げた。
と同時に周りからも嘲笑が響く。
「どういうことだ?」
「金子は比津次の人間じゃない。奴を送り込んだのはウチだ」
狸翠は眉を吊り上げた。
「まさかサツどもまで引っ掛かるとはな。アレはウチにはいらない。だから力のないヒツジちゃんにプレゼントしてやったのよ」
周りは爆笑に包まれた。
ぐっぐっと笑いながら、天城も口を歪める。
「いらないとは?」
「よくぞ聞いた!」
言葉と一緒にバン、太ももを叩く。
一転して、天城の顔は怒りに包まれていた。
「あいつはな、ウチに入ってシノギを猫ババしてたんだよ!」
シノギとは、彼ら暴力団の用語で、売上金のことを指す。


