振り向いた制服のおじさんがピタリと止まった。
目をまん丸にして炯斗の顔を穴が空く程に見つめている。

「俺の顔に何かついてます?」


普通に聞いたつもりだった。
しかしおじさんは凄い勢いで身構える。
よくわからないが汗びっしょり。

今はまだ寒い春先であったはずなのに。


「ひ、日奈山炯斗! 確保する!」

「ええっ!?」


何で!? 俺何かしたか?

――まぁ、とりあえず…お巡りさんに追いかけられたら……


逃げるしかねぇぇえ!!


迫るおじさんにくるりと背を向けて交番を飛び出した。


「待てっ!」

「じゃあ追っかけんな! 俺は何にもしてない!」

「お前が容疑者だろっ!」

「知るかっ!!」


ギャーギャーと走りながら喚く警察官と容疑者。


あぁ、もう腹減ってんのに……ついてねぇ!!


その時――


「ファントム殿! こちらに!」


炯斗、声をスルー。
だって知らない人だし。

「だからこちらですって!」

「俺に言ってたの!?」