泡沫眼角-ウタカタメカド-


どれくらいの間、そうしていただろうか?


本当はそんなに時間も経っていなかった。


「ことのん!」

恵は息を切らせて、言乃の横に並んで、息を飲んだ。


「……ことのん…」

「ちょっと、どうしたってのよ!」


後ろから不平まじりに走ってきた朋恵も、二人の様子を見て戸惑ったように、口をつぐんだ。


――どうしたの?

――わかんないです…


朋恵は小さく嘆息すると、クルリと踵を返して戻って行った。

聞くことは聞きなさいよ、という視線を恵に寄せて。


う、と困った恵は、恐る恐る言乃を覗きこんだ。


「ことのん…泣いてるの?」

「……」


言葉もなく、言乃は目元をごしごしと拭った。


【すみません。もう、大丈夫です】


無理に笑って見せた顔は、まだ目尻が赤い。


「本当に?」

【はい】


一向にそうは見えないのだが、こうなった言乃は頑固で聞かない。
それを知ってる恵は諦めてため息をついて、心を鬼にすることにした。


「さっきここから出ていったのって……炯斗、だよね?」

【はい】

「何か……あったの? 炯斗がことのんに何かしたの?」


言乃は小さく唇を噛んだ。


【すみません】

「何が?」