泡沫眼角-ウタカタメカド-

「返してやる気はないぜ、当分の間は。少なくとも、オレの目的が達成されるまでは」

「その目的が、これまでの殺人だとでも言うのですか!」


そんなことをすれば、周りから見えているのは炯斗の姿。
ファントムの罪は、全て炯斗にのしかかることになる。


「…と…せ、ませ……」

「何?」


ギュッと唇を結んで、潤んだ、けれども強い瞳でファントムを見上げる。


「…そんなこと、絶対にさせません…! 私が、止めてみせます!」

「―、!」


クッ、と零れた声。
次の瞬間、額に手をおき、体を曲げてファントムは笑い始めた。

「ハハハ! いいね…それくらい言ってくれると張り合いが出るぜ!

でも、気を付けな」


突然止まった笑い声に、ゾクッと悪寒が走る。

ファントムは大股で近づき、言乃の耳元に顔を寄せた。

「ッ、」

後退ろうとしても、がらくたに足を取られて出来ない。


「奴を助けたいなら、急ぐことだな」

「そ、それはもちろん、これ以上の罪を――」


「そうじゃなくて、」

ファントムは一層声を潜め、



「急がないとこのままじゃ、アイツ消えるぜ?」



それは一体――?

そのままファントムは言乃の肩を支えに通りすぎる。


「それに、すぐにアイツを助けたいならお前のチカラを使えば良かった話だ。
すぐにチカラを使えない――そこがコト、お前の弱さだ」

「………」

うつむいて、何も言えない。
そんな言乃を一瞥すると、ファントムは前を向いた。


「じゃあな。お前がオレを追うのなら、また会うこともあるだろうよ」


答えはない。

小さく息を吐くと、ファントムは大通りの中に消えていった。