陰陽姫 夜明けを見るものたち



翠「…阿部様?」

賢「駄目。」

おずおずと呼ぶが拗ねたように唇を尖らせてしまった。


あー、もう!子供かアンタは!!

翠「け、賢人…様?」

賢「堅苦しい。」

翠「じゃあ賢人さん!これ以上は無理ですから!!」

そう叫んでフイッと視線を逸らすと、すぐ近くでプッと吹き出す声。

翠「…何で笑うん?」

賢「いや、わりぃ。うん、それでいいぜ。」

ニッと笑い、翠の額に一瞬だけ触れた。

翠「ちょっ!///」

賢「…返事は、お役目を終えたらすると約束したな。」

ポツリと真剣な目で呟く賢人に翠も戸惑いながら頷く。

翠「け、賢人さん、私…」

翠が何かを言う前に賢人の長い人差し指が翠の唇に当てられた。

賢「いい。今は何も終わってねぇんだ。だから、何も言わなくていい。返事を訊くためにお互いに生き残ることだけを考えろ。」

そう言ってグリグリと頭を撫でる賢人。それに堪えられず彼に抱き付いた。

翠「……生き残ってください。必ず…!」

胸に顔を押し付け祈るように呟いた。