秋【おっと、そういえば翠にあげたんだったの。】
白【…あれは貴様の宝だろ?良かったのか?翠に渡して。】
秋【言うたであろう。"就任祝い"と。儂とて罪悪感はあるのだ。望まぬ道をあの子に押し付けたことのな。だから三年の猶予を与えた。三年間だけはあの子はただの神木 翠でいられる。】
腕を組んで白棹は難しい顔をする。
白【そこまではっきり言うてやれば良いものを。死んでも不器用な奴だな。】
秋【ほっとけ。】
拗ねたようにそっぽを向く秋雅は見た目がいずなだけに、幼く見えて白棹は思わず吹き出した。
秋【何じゃ?】
白【さぁな?】
ギロッと睨むも白棹には効果はなく、想定の範囲だったので秋雅はそれ以上は何も言わなかった。
秋【……さて、儂はもう逝くぞ。らしくない事ばかり喋ってむず痒いわ。】
カリカリと首筋を掻く秋雅にフッと笑い
白【そうか。我が生きている内に今一度会えれば良いな。】
らしくもなく素直にそう伝えていた。
それに少し驚いたように目を見開くも優しく目を細める。
秋【ふっ、そうだな。あの子の事、言うまでもないだろうが頼むぞ。】
白【ああ。】
いずなの身体が淡く光るとその場で崩れ落ちる。
白棹はそれを支え抱き上げた。
白【無理をさせてすまぬな。だが最後に友と話せて嬉しかった。感謝するぞ、いずな殿。】
眠っている少女から返事は無く、しかし僅かに微笑んでいた。